チッチの推薦図書
126-カニグー山(1921年制作)
―ファン・グリス(Juan Gris 1887-1927)ー
前回ご紹介したピュトー・グループの中でもとりわけ重要視されるのが、このファン・グリスです。スペイン人ですが、パリで活躍しました。形態の分割が細か過ぎないので、何が描かれているか分かり、また色遣いも淡くではなくしっかりと濃く着色されているので、独特の安定感があります。ピカソとブラックに続いて【第3のキュビスト】と称されました。グリスは生涯ずっとキュビスムに留まり、キュビスムの深化に努めた、この時代では稀有な男です。
2020年:秋のお薦めの1枚 No.16
掲載日:2020年11月10日
127-水浴びする女性たち(1917年制作)
―アンドレ・ロート(André Lhote 1885-1962)ー
ロートはピュトー・グループの参加を経て、第1次大戦後にフレネーとともに【ネオキュビスム】を提唱します。彼は印象派のような純粋に感覚的な作品も、キュビスムのような純粋に知的な作品もともに不完全とし、両者の融合を図った温かみのあるキュビスムを目指しました。といっても、キュビスムというにはかなり写実的で、キュビスム崩れと揶揄されました。しかし、このソフトキュビスムというべき作風は、レンピツカに大きな影響を与えます。
2020年:秋のお薦めの1枚 No.17
掲載日:2020年11月13日
128-結婚生活(1913年制作)
―ロジェ・ド・ラ・フレネー(André Lhote 1885-1962)ー
ピカソやブラックが徹底的に形態を分解したのに対し、フレネーは調和ということを考え、形態を分解し過ぎないようにしました。なので、フレネーの絵はファン・グリスの絵と同様、何が描かれているのか分かります。線と色彩のコンビネーションによる均整の取れた構成と、色彩の強弱を意識したメリハリのある色遣いによって、生前中は前衛的なキュビスム画家として広く名の知れた画家でした。 晩年は古典に回帰しています。
2020年:秋のお薦めの1枚 No.18
掲載日:2020年11月19日
129-人物、魚、月光(1926年制作)
―ルイ・マルクーシ(Louis Marcoussis 1878-1941)ー
マルクーシはポーランドからフランス・パリに出てきました。最初はポーランドでもパリでも生活のためにイラストを描いていました。しかし、そのかたわら絵画制作に励み、印象派や野獣派の影響を受けながら、1910年代に入ってからはキュビスムのスタイルに転向します。第1次大戦中にフランス軍のポーランド人部隊に参加し、その功績からフランス市民権を得ます。1930年代に入ってからは版画制作に熱心になり、200点を超す作品を残しています。
2020年:秋のお薦めの1枚 No.19
掲載日:2020年11月26日
130-カフェのダンサー(1912年制作)
―ジャン・メッツァンジェ(Jean Dominique Antony Metzinger 1883-1956)ー
メッツァンジェはアルベール・グレーズと共にキュビスムの理論書である【キュビスムについて】を執筆し、ピュトーグループを理論的に支えた画家です。彼は理論家であり、【複数の視点から対象物を捉える】というキュビスムのテーマを最初に言説化したのも彼です。ピュトーグループのキュビスム作品はカラフルなのですが、彼はそれプラス装飾性にも富んでいて、ピカソやブラックとは一線を画したキュビスム絵画を探求しました。
2020年:秋のお薦めの1枚 No.20
掲載日:2020年11月27日