チッチの推薦図書

106-死の島 Ver.3(1883年制作)

106-死の島 Ver.3(1883年制作)

―アルノルト・ベックリン(Arnold Böcklin 1827-1901)ー 

 

 ベックリンといえばこの【死の島】です。1880年から86年の間にこの主題でくり返し描いており、本作品は第3バージョンになります。イタリアのフィレンツェにあるイギリス人墓地をモデルにしているそうです。【死の島】は画家、小説家、音楽家など、とにかくさまざまな芸術家の霊感源となり、文芸評論家や精神分析家の論考でも頻繁に取り上げられました。マグリットやダリなど写実系のシュルレアリスム画家にも影響を与えています。

 

2020年:夏のお薦めの1枚 No.21

掲載日:2020年8月19日

107-赤への返答(1943年制作)

107-赤への返答(1943年制作)

―イヴ・タンギー(Raymond Georges Yves Tanguy 1900-55)ー 

 

 シュルレアリスム画家であるタンギーの描く絵には、いつも海の底のような、あるいは雲の上のようなどことも分からない不思議な空間が広がっており、その中で鉄片や石のような、これまた不思議な物体がひしめき合っています。物体からはアメーバのような生物的雰囲気が感じられ、タンギーは【生物的形態】と呼んでいました。色調や物体の質の変化は多少あるものの、タンギーは生涯一貫してこの作風で絵を描き続けました。

 

2020年:夏のお薦めの1枚 No.22

掲載日:2020年8月22日

108-人魚の村(1942年制作)

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―ポール・デルヴォー(Paul Delvaux 1897-1994)ー 

 

 以前ご紹介したマグリットとともにベルギーのシュルレアリスム画家の双璧を成すのが、このデルヴォーです。内気なので、直接シュルレアリスム運動には参加しませんでしたが、シュルレアリスム展には作品をしばしば出展しました。デルヴォーの描く女性はいつも同じ顔ですが、これは若い頃、母親によって強引に引き離されたタム(愛称)という女性で、デルヴォーは生涯ずっとタムという1人の女性を描き続けました。一途な男です。

 

2020年:夏のお薦めの1枚 No.23

掲載日:2020年8月24日

109-森(1925年制作)

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―マックス・エルンスト(Max Ernst 1897-1976)ー 

 

 エルンストは【フロッタージュ】や【グラッタージュ】など新しい技法を開発して、シュルレアリスムの表現を押し広げた功労者です。長くなるので詳説は省きますが、いずれもロールシャッハ・テストの要領で、偶然の形からイメージを膨らませながら絵を描いてゆきます。エルンストは生涯を通して、普段は理性によって表に出ることを阻まれている無意識の感情を、いかにして表に出すか、ということを模索し続けた画家です。

 

 

2020年:夏のお薦めの1枚 No.24

掲載日:2020年9月4日

110-小さな夜の曲(1943年制作)

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―ドロテア・タニング(Dorothea Tanning 1910-2012)ー 

 

 ドロテアは前回ご紹介したエルンストの奥さんです。1936年のニューヨーク美術館で開催された【ダダ・シュルレアリスム展】を見て、「これこそ自分のやりたいことだわ」と思ったそうです。以後、アメリカに亡命してきたシュルレアリストたちと交流しながら画風を磨き、その過程でエルンストと結ばれます。しかし、彼女のシュルレアリスム時代は1940年代のみで、それ以降は独自路線を行き、年を追うごとに画風が抽象化してゆきました。享年101歳、長寿です。

 

2020年:夏のお薦めの1枚 No.25

掲載日:2020年9月7日