チッチの推薦図書
051-考える人(1880~89年頃制作)
―オーギュスト・ロダン(François-Auguste-René Rodin 1840-1917)ー
この【考える人】はもともと、ロダンの未完に終わった大作の【地獄の門】を構成する一部分でした。しかし、1889年に【地獄の門】から切り離され、【詩人】という題名で発表されます。ロダン自身は、制作中は【詩想を練るダンテ】と呼んでいたそうです。国立西洋美術館の【地獄の門】には、門の頂上に【考える人】が設置されており、考えるというより、眼下の地獄をのぞいている感じです。【考えている人】は【見ている人】だったかもしれません。
2020年:冬のお薦めの1枚 No.11
掲載日:2020年1月28日
052-魚(1945年制作)
―アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder 1898-1976)ー
カルダーは動く彫刻【モビール Mobiles】によって、「彫刻はずっしりと重く不動のもの」という概念を覆した彫刻界の革命児です。ちなみに、このモビールの命名者はマルセル・デュシャンです。カルダーの代表作にはモビールのほかにもう1つ、巨大な金属板の立体構成による【スタビル Stabiles】というのがありますが、こちらの方の命名者はジャン・アルプです。カルダーのモビールなくして、動く美術【キネティック・アート】の誕生はなかったでしょう。
2020年:冬のお薦めの1枚 No.12
掲載日:2020年1月29日
053-サルタンバンクの家族(1904~06年頃制作)
―パブロ・ピカソ(Pablo Picasso 1881-1973)ー
年代によって画風が異なり、ピカソといえば【キュビスム】の創始者として有名ですが、今回は【バラ色の時代】から選んでみました。【サルタンバンク】は路上で大芸道を行う旅芸人で、芸人としては最下層に位置します。その日暮らしで、輝く未来や人生の保障はありません。華やかな芸の裏にはそういった悲哀が潜んでおり、それを見事にとらえた1枚です。ドイツの大詩人リルケが【ドゥイノ悲歌】の第5悲歌で主題として取り上げていることでも有名です。
2020年:冬のお薦めの1枚 No.13
掲載日:2020年1月31日
054-ザリガニ漁(1895年制作)
―カール・ラーション(Carl Larsson 1853-1919)ー
ラーションは水彩画で有名です。彼は当時の中流階級の人々の生活風景を描きました。どの絵も明るく温もりに満ちた情景で、人気を集めました。しかし、父親がアルコール依存症だったということもあり、彼自身は実に悲惨な幼年時代を送っていました。だからこそ、幸福な絵を描きたい、と思ったのでしょう。日本の浮世絵からそうとう影響を受け、特に絵の構図に生かされています。アール・ヌーヴォー的曲線も取り入れ、ミュシャの風合いもありますね。
2020年:冬のお薦めの1枚 No.14
掲載日:2020年2月4日
055-人間と鳥と船の国(1950年制作)
―フンデルトヴァッサー(Hundertwasser 1928-2000)ー
人間と自然との共生をテーマとするフンデルトヴァッサーは、自然界に存在しない【直線】を用いず、曲線を多用した独自の様式でもって、建築物をデザインします。建物の外見も色鮮やかで、すぐに彼が作ったものだと分かります。彼は曲線のほか渦巻き模様も好み、彼の絵には渦巻き模様が頻繁に出てきます。彼のスタイルにはフォービスム、ウィーン分離派、アール・ヌーヴォー、ヴォーティシズムなど、さまざな芸術様式の影響が見られます。
2020年:冬のお薦めの1枚 No.15
掲載日:2020年2月7日