チッチの推薦図書
036-牛乳を注ぐ女(1657~60年頃制作)
―ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer 1632-75)ー
実は、この絵には嘘が1つだけあります。この絵の角度ですと、本当ならばツボの中の牛乳は見えてなくてはなりません。しかし、フェルメールは注がれる牛乳の効果を高めるために、ツボの中の牛乳を描かなかったのです。絵は現実とは違います。在りのままに描いたのでは、迫力ある絵は描けません。ですから、ちょっとだけ嘘をつく方が良いのです。理想にこだわっても、逆に現実にこだわっても物事はうまくいきません。幸福の条件はちょっとだけ嘘をつくことです。
2019年:冬のお薦めの1枚 No.11
掲載日:2019年12月18日
037-目をえぐられるサムソン(1636年制作)
―レンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn 1606-69)ー
旧約聖書のサムソンの物語を扱った宗教画はたくさんありますが、レンブラントの描いた本作はサムソン物の傑作と称されています。これほどまでに劇的で、そして痛々しく描かれたものは他にはありません。サムソンの目から飛び出た血が空中で静止していますが、そう、これは今まさに目をえぐられたその瞬間を描いたものなのです。カメラのない時代に、写真と同じことをやってのけているわけですから、レンブラントすごいです (゚д゚)!
2019年:冬のお薦めの1枚 No.12
掲載日:2019年12月19日
038-バッカスの勝利(1628年頃制作)
―ディエゴ・ベラスケス(Diego Rodríguez de Silva y Velázquez 1599-1660)ー
本作品はベラスケス中期の名高き傑作です。当初はただの飲み会の絵だと思われていたので【酔っぱらい】という画題がつけられていました。ベラスケスの絵は、近くで見ると筆致が荒くて何が描かれているかよく分からないのですが、少し離れた所からながめると、ちゃんと写実的な衣服に見えます。このベラスケスの技術を後の印象派が導入し発展させます。マネはベラスケスを【画家の中の画家】と讃え、相当影響を受けています。
2019年:冬のお薦めの1枚 No.13
掲載日:2019年12月20日
039-イタリア村の農民の踊り(1630年頃制作)
―ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens 1577-1640)ー
ルーベンスはよくバロック画家の大家として紹介されますが、厳密にいうと、バロックと古典主義を折衷した独自の形態を取っており、ルーベンスはルーベンスです。前半生はバロック色が強いですが、後半生はロココ調を先取りしたような優美なスタイルです。華やかな色彩に目が行きがちですが、画面構成のバランスを取るのがめちゃくちゃうまい画家です。動きのある人物を多人数配置しているにもかかわらずですよ。いやホントすごい (゚∀゚)
2019年:冬のお薦めの1枚 No.14
掲載日:2019年12月24日
040-吹 雪(1786-87年制作)
―フランシスコ・ゴヤ(Francisco José de Goya y Lucientes 1746-1828)ー
ゴヤの絵の中で、冬らしい絵を見つけました。ゴヤは宮廷画家として成功を収め、生活が安定すると、庶民も描くようになります。今でこそ、冬は単なる寒い季節ですが、暖房機器や防寒着が充実していない一昔は、農民にとって冬は野の動物と同様、過酷な季節であり、死の季節でした。冬になると、貧しい農民の間では凍死や病によって死ぬ者が必ず出ました。【吹雪】はそうした農民の苦しい生活を表した1枚です。 絵から寒さが伝わってきます (;゚Д゚)
2019年:冬のお薦めの1枚 No.15
掲載日:2019年12月25日