チッチの推薦図書
171-リダ・ボレッリ―女優(1910年制作)
―ジュゼッペ・アミサニ( Giuseppe Amisani 1881-1941)ー
生前は人物画、特に女性画として欧米に名を馳せました。アミサニのスタイルは印象派にアールヌーヴォーの優美さを加えた華やかな色彩で、後半生はマリ・ローランサンの影響もうかがえますね。オリエンタルな絵にはドラクロワをお手本とした形跡があります。主にイギリスとイタリアの上流階級から注文を受けて肖像画を描き、1908~18年の10年間はブラジルのサンパウロで活躍しました。ここの社交界でも人気を集めました。
2021年:秋のお薦めの1枚 No.1
掲載日:2021年9月9日
172-タマネギの涙(1929年制作)
―カニャッツォ( Cagnaccio di San Pietro 1897-1946)ー
おもしろい画家を見つけました。イタリア人のマジック・リアリズムの画家のカニャッツォ(本名ナタリーノ・スカルパ)です。ヴェネツィア美術アカデミーで絵画の古典教育を受けた後、1910年代は未来派のスタイルに接近し、1920年代からマジック・リアリズムの手法で描き始めます。地方の庶民の生活を題材に、色調や色彩も抑え、仰々しく描かないのがいいですね。変わったところが描かれていないのに、謎めいているのがマジック・リアリズム絵画です。
2021年:秋のお薦めの1枚 No.2
掲載日:2021年9月15日
173-劇場の客席(1909年制作)
―ウリッセ・カプート( Ulisse Caputo 1872-1948)ー
カプートはイタリア分割主義の画家です。フランスの印象派の影響を受けた、イタリア式の印象派です。分割主義はフランス印象派と同じように、原色をキャンバス上に並置する筆触分割を用いますが、点に近い細かい筆触が特徴のフランス印象派と違って、線状の長めの筆触を好みます。また、原色のみならず混色による筆触分割も試行し、厚塗りの技法も組み合わせることによって、イタリア絵画に新しい息吹を吹き込みました。
2021年:秋のお薦めの1枚 No.3
掲載日:2021年10月1日
174-レヴィ夫人(1921年制作)
―シュザンヌ・ヴァラドン( Suzanne Valadon 1865-1938)ー
以前紹介したモーリス・ユトリロの母です。シャヴァンヌ、ルノワール、ロートレックなどの名立たるモデルを務めている(当時引っ張りだこの人気モデルだったそうです)うちに、自身でも絵を描くようになりました。ヴァラドンは、女性が女性の裸体を描くことがタブー視されていた時代に、女性はおろか男性の裸体までも描いていた画期的な女性です。画業の前半生はポスト印象派的、後半生は野獣派・表現手記的な画風で絵を描きました。
2021年:秋のお薦めの1枚 No.4
掲載日:2021年10月7日
175-日の出のミューズ(1918年制作)
―アルフォンソ・オスベール( Alphonse Osbert 1857-1939)ー
印象派が人気を博した頃、外面描写に徹する印象派に対抗して、人間の内面や宗教的神秘を表現しようとする象徴派が誕生します。そして、印象派が点描派まで推し進められると、この点描でもって現実から離れた神秘的な風景を描く【点描象徴主義】ともいうべきスタイルが生まれます。オスベールはこのスタイルの画家の1人です。オスベールの絵はだいたい画面が青みがかっており、題材も夜の風景が多かったため、【夜の詩人】と呼ばれました。
2021年:秋のお薦めの1枚 No.5
掲載日:2021年10月22日